« 過去絵、整理しました。 | トップページ | またまた過去絵、整理しました。 »

2011年7月 4日 (月)

P.D.ジェイムス 「罪なき血」

読了しました。

まったく、この人の作品ときたら…!しばしば頭から氷水をバケツでかぶったような気持ちにさせてくれる。それをうっかり忘れていたから尚のこと氷水が冷たく感じた。

母親は我が子を愛するものだなんて、誰が言った?
そんなこと、誰が決めたの?どうしてそう思うの?って、著者にそう詰問されているように感じた。

フィリッパのこと、好きな人っているかな?彼女に親愛の情を感じる?週末に自分の家に呼んで一緒に飲んだりしたい人が?わたしは御免こうむります!きっと向こうもわたしみたいのとは付き合うだけ時間の無駄って思うでしょうよ、きっと・笑。

知性と教養と、スリムなプロポーションと、若さと、そして自信と。秋からは名門大学に進学が決まっているし、養父はリッチで、養母は料理の腕前がプロ級。彼女に足りないのは可愛げだけ。本人も自覚があるようだけど。

そんなフィリッパでさえ、実母から自分は愛されていたと当然のように信じて疑わなかった。少しも。
殺人犯の母は許せても、自分を捨てた養育放棄の母は受け入れられなかった。

大嫌いな彼女が、その事実に打ちひしがれて雨の中を泣きながら歩くの。それをわたしはどう感じたらいいの。憐れみか、あざけりか。
冒頭に登場するソーシャルワーカーはフィリッパに憐憫の目を向ける。フィリッパのほうはそれを感じ取って一瞬不思議に思うも、はなから見下しきって、ロクに話も聞いてなかった。けれど、彼女の眼差しは鋭く行く末を見抜いていたのだ…!物語が始まって間もないたった数行に著者の重大な意図が込められていたのだと思うと、恐ろしく感じた。

「人間誰でも、生きるためには空想が必要なものよ。その空想を捨てるというのは、大変な苦痛を伴うこともあるわ。生き生きとした新しいものに生まれ変わるのではなくて、一種の死になってしまうことが――」

ストーリーは他にも登場人物がいて、それぞれに展開があるのだけれど、わたしにはそこだけが突き刺さった。フィリッパと実母の関係、それと、フィリッパと養母の関係。こどもを産むということ、育てるということについて考えさせられた。
そしてやはり、フィリッパには憐れみを感じる。

|

« 過去絵、整理しました。 | トップページ | またまた過去絵、整理しました。 »

読書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 過去絵、整理しました。 | トップページ | またまた過去絵、整理しました。 »