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2011年10月 3日 (月)

松本清張 「砂の器」

上下巻とも読了。

何を隠そう、松本清張を読むのは今回が初めてでして。
先にドラマを観ていたせいも大いにあるとは思うのですが、思っていたよりもずっと読みやすくて引き込まれた。

まずこれを言いたい。
先だってのドラマ、非常によくできていたのだなぁ。いろいろと制約もあろう中で、大胆な変更を施しつつも、感動的な作品に仕上がっていたことがとてもよくわかり、改めて好意的に感じている。

「羽後亀田」のくだりは、今西刑事が寝転がって奥さんの旅雑誌を眺めていて偶然に目にとめたものだし、「紙吹雪の女」は、今西刑事が銭湯で湯船に浸かって思案していて思いついたものであった。や、フタを開けてみれば!
…閃く時ってそんなものかもしれん…別段取り立ててドラマの展開が突飛ってわけでもなかったかな・笑。

元浦千代吉がハンセン病患者だったことを知り、秀夫への同情が増すとともに、差別という深刻な社会問題についても考えさせられた。殺人犯かもしれない男の息子と、当時遺伝すると思われていた業病患者の息子とでは、絶望の深さが違うであろうよ。
父親が隔離されたあと、亀嵩から逃走した秀夫には、いったいどんな思いがあったのだろう。本には「すでに放浪性のある秀夫は、三木巡査の親切にもかかわらず亀嵩を脱走―」とあるけれど、父がハンセン病患者であったことを皆に知られている亀嵩から逃げることは、あるいは自由を手にすることでもあったかもしれない。当時、秀夫は7歳――そこは想像するよりほかになし。

三木謙一は、なんとほんとに立派な御仁であったことよ。彼が東京の和賀英良を訪ねるのに、他意はなかったと今西刑事は考えている。確かにそうだったのだろうな~、と思うにつけ、いっそうやるせない感が増大。非の打ちどころない善人の無邪気な懐かしさが、とんでもない悲劇の幕を切って落としてしまった。必死に生き延びた浮浪児を、触らずにそっとしておいてくれたなら…!と思わずにいられない。和賀に会ってどうしたかったのかな~、立派になったことを讃えてやろうと思ったのかな~、自分の善行が結実したって思ったかな~。や、三木さんはなんにも悪くない、悪くないんだけど、さ。

ケチでもなんでもなく、ひとつ今なお疑問に思うことが。
三木謙一は岡山県の出身ですね?ちょっと逆算したのだけど、18歳で巡査に奉職し、10年間を島根県で過ごす。のちに28歳で退職し、岡山県で雑貨商を営み23年、享年51歳。
元浦秀夫は石川県の生まれで、4歳で母が死亡、父との遍路の旅を経て亀嵩に至り、7歳で孤児に。
この2人が23年ぶりに会って、出雲弁で会話するものでしょうか?

言葉の訛りって、言語を習得する時期(ごく幼少期)に受けた影響がとても大きく、その後もなかなか変わらないものだと思っていたので、不思議に思い。
たとえば、関東在住で、普段は標準語で話すバイリンガルのネイティブ関西人が、東京で関西人と会って、自然と関西弁になる、ということはあるでしょう。
しかし、東京生まれの東京人が大阪に異動になって、10年間赴任したとして、はたして大阪弁が身につくでしょうか?
じゃあ、ネイティブカナガワンなわたしが、10年大阪で暮らしたら、関西弁を習得できるのかしら…。
10年とはそんなに長い年月であろうか…ふと、そんなことが気にかかった。
というか、それってこの作品の推理小説としての核なのに、そこでつまづいてるわたしって…。


原作においても、今西刑事と吉村刑事の関係がとてもよかった。互いに敬意を払い合っているから、どちらを主役に据えても、それは変わらないのだ。この2人の熱心な刑事がとても好ましく。もう、小林薫と玉木宏で連ドラにしてくれ!そしたら毎週欠かさずに観る!絶対に観る!あ~、ライスカレーをモリモリ食べる玉木宏が目に浮かぶ…。
渋谷のおでん屋で、捜査の進捗を報告し合ってくれ!この人たち、職場が違うところがまたイイのだ。

今西刑事の奥さんはとてもいいひとで、奥さんの鑑のような女性であった!
職場の若いの(吉村クンね)連れてくるから、あと1時間ですきやきの支度して、とか、休暇とって私費で石川に行ってくるからお金ちょうだい、とか言われたら、わたしならキレてる・笑。

当て読み、うんと楽しみました。よかったらぜひ!

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