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2012年11月19日 (月)

舞台 「4 four」

観てきました。

―これから観劇なさるかたへ―
なるべくラクな服装で出かけられたし。
できればスカートはやめるべし。(特にタイトなやつはブーです)
ヒールの高い靴もあまりお薦めできません。(特に番号の若い方)

まず、座席がない。
これは演出のひとつで、サプライズなのかもしれませんが、書きます!

床に番号が記してあって、その場所に木箱を設えてもらい、その上に座布団を敷いて座るという。その配置も整列していなくて、近くの人とは中央に向かって前後左右しているのです。
最も中央寄りの箱は横倒しに、その後ろは短い辺で2個立て、その後ろは長い辺で立たせて2個、というように、同じ木箱の辺の長さを利用して高さを出しているのです…が、その人の体格に合った置き方に当たればいいけれど、そうでないとちとツライ。
最前列の女性で、スカートなので立て膝もできず、ハイヒールの脚を持て余し、という方がいらっしゃったので。
劇場でひざ掛けを貸してもらえると思うので、必要でしたら是非。

ま、2時間くらい我慢できなくもないけど、お芝居に集中するためにも、快適に観られたらそのほうがよろしいかと。


そして、この先のわたしの感想などは、なにとぞ読まずに臨まれますように、これはお願いでございます。

とは言ったものの、何から書いてよいやら…もう途方に暮れてしまうよ。

できればネタバレせずにお伝えしたいけれど、それは無理だと思われ。
率直に、思ったことを書きます。

そして、予想外に検索でこのページに直接来られる方が多く、まだ上演中ですので念のため反転にします。カーソルをドラッグさせて読んでください。

観てよかった。
観てよかった、に尽きる。

わたしがこのお芝居のチケットを取ろうと思った理由のひとつが、「死刑制度」を扱っていると知ったから。(それだけじゃないけども)
どうやら世の中、世界的に死刑制度は反対・廃止の方向じゃないですか。
わたしがよく読んでいたブログで、10代の女の子が「死刑制度廃止」を唱えてて。その物言いが実にキッパリと、もう断固断言で。しかも、その理由・理屈が至極もっともで、どうやら反論の余地などないみたい。
なるほど、そうか。そうなんだろう、そうなんだろうな、でも…
でも、なんだか釈然としなくて、誰かわたしを納得させてくれないか、などと思っていたのである。

でも、この芝居は立場表明をしない。
賛成とか反対とか、ひとつの答えを出さないんだよ。
でも、問題提起だけして「考えろ」っていう感じでもない…。
作家は自分の意見をスピーク・アウトしないんだ、そういうやりかたなんだ…ろうけど、わたしには賛成の姿勢は感じられなかった。
答えはずっと前からそこにある、ただ知って、考えて気づいて欲しい、と。

チケット引き換えの座席カードの裏には、
裁判員
法務大臣
刑務官
未決囚
と書かれていて、その中のひとつに赤ペンで丸印がしてあり、それは人によって違う。
舞台と客席の仕様といい、観客を巻き込む狙いが大いに感じられた。

なんと緊張した2時間であったことよ。
わたしは初心者だけど、こんなお芝居フツーじゃないですよね?
役者はあちこち歩き回って演技するんですが、セリフがないときなど客席に座ってる。その席がちょうどわたしの右斜め横で、田山さんと高橋さん、どちらかが座ってるんですよ…。50センチくらいのとこによ?
じつは、かなり最初の方、もう冒頭もいいとこっていう初めに、すでに雰囲気に呑まれて感極まってるのもあって(←笑)右目だけから涙がポロリツーと流れてしまって、もう、それが恥ずかしくて恥ずかしくて、「なにコイツいきなり泣いてんだ」ってな感じで。
センターまでも2メートルないくらいの距離なんですよ?
しかも向かいの壁際には須賀さんが座ってて、向こうは暗いけど、わたしにはバッチリ照明が当たってて…
ひー!
でした。

役者は膨大なセリフをよどみなく喋る。
もう、ほんとに、よくもこんなに長いモノローグを、完璧に…という感動。
高橋一生さん、さすが張りのあるお声で、わたしのすぐ横で不意に喋りだしたときビクッと2ミリくらい飛び上がってしまった。
すまん。
急にでかい声出すもんだから、ビックリしちゃって、さ。
あと、お客さんに向かって、顔が30センチくらいの距離でセリフを言うシーンがあって、あれに当たったお客さんは面食らうだろうなぁ~、と。
高橋さんのファンだったりしたら失神しかねないな、ウン。

絞首刑が執行されるシーンは衝撃的だった。
ワイヤーで安全が確保されているとは言え、人間が(高橋一生さんだよ!)、頭に黒い袋を被せられ、首に縄をかけられ、手足を縛られて、吊るされるんだよ、目の前で。
ショッキングな光景だった。
痙攣の演技と、そのまま20分吊るすと聞いて胸が悪くなった。
ただ、「絞首刑反対」と「死刑反対」は別物だと思う。
絞首刑は廃止すべき。
刑務官のためだけにも。
わたしに渡されたカードが「刑務官」だったのも何かを感じる…。

わたしが冒頭で涙してしまったのは、イケテツさんのセリフで

「反省」という言葉は論理でも倫理でもなく、感情だ。それを嘘か真実かを判断するのもまた感情だ。裁いたのは法律ではない、私達の感情だ。

というところに感じ入ってしまったからである。
まさしくその通りだと思う。
問題は「感情」だ。
無差別に人を殺した者が、太陽の光の温かさや、季節の移ろいなどを感じていいのか?
ふっと微笑むような瞬間があるのを、許していいのか?
人間は一瞬一瞬を悔悛だけで埋め尽くして生きていくことはできない。
劇中、高橋一生演じる未決囚が、鳥のさえずりを聞いて覚醒する場面があるが、わたしなどはそれすらも許しがたいという感情を捨てられない。
しかし、その醜さと、その先にある虚無感も理解している。
だから苦しい。

この芝居に登場する人たちも、そんな「感情」によって苦しみ、それでこんなことをしているのだろう。解りたくて、痛いほど必死だ。
頭で思うことと、心で思うことの折り合いを、どうやってつけたらいいのか。
着地点を探している。
ラスト、野間口さんのセリフで一石が投じられる。
その「気づき」と「共感」こそが彼らの「窓」であったと思う。

感情の問題は、感情でしか決着がつかないのかもしれない

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コメント

Leekさん♪ 

わわわ~!!

めっちゃ観たい内容……

芝居熱、冷めやらぬ今、良いお芝居は何でも観たい!
思わずチケットの有無を確認しに飛んで行ってきちゃいました。
…いや…あるわけないって分かってたけどね。
…あったって遠征出来ないんだけどね。

死刑制度って、ほんと、色々考えさせられます。

立場や見方が変わればおのずと判断基準も変わってきたり…

Leekさんがお邪魔していたと言う、10代女子の意見をぜひ拝見してみたいものです。

投稿: みぃ☆ | 2012年11月19日 (月) 13時43分

わーこれは観たい!
ええなーええなー。

死刑制度…私は被告に思いっきり後悔して欲しいクチなんで、
「もー君には反省能力ないから死になさい」「ハイ喜んで♪」
ってケースは激しくイヤ。

心からの反省は望めなくても、
反省をありとあらゆる方法で表現する義務を日課とする終身刑に処したら、
再犯は防げるわ、やりたくもない善行を義務付けられるわの生活に、
殺人欲求を殺がれるしかない余生ゆうもんは、
快楽殺人犯にはこの上なくとんでもない拷問かも~
とか黒いこと考えたりします。

「今日は歌で謝罪を表現」とか「創作ダンスで表現」とか、
辛いわ~絶対。

投稿: カリコ | 2012年11月19日 (月) 20時55分

みぃ☆さん
並べば当日券もあるみたいですけど…

そうですね、難しいですよね。
でも、まずは考えることが一歩かもしれません。
わたしが見ていたブログは、もう何年も前のことで、今では無いみたいです。
就職して、忙しくなったのかな…なんて思います。

カリコさん
劇中、未決囚が
「反省はしないけど、贖罪はする」
って言うセリフがありましたよ。

小学校に乗り込んで、子どもを手当たりしだい包丁で刺すような人に、そんなプログラムを実施する方法があるとしたら、それもいいかもしれません。
でもそれ、次第に楽しくなってきちゃったりしないでしょうか。

投稿: Leek | 2012年11月20日 (火) 05時25分

>「反省はしないけど、贖罪はする」

なんという破壊力のあるセリフ!!coldsweats02
それ言うたらアカーン。殺意しか湧けへん!

そういえば文化大革命直前の中国かな?でそんなプログラムを実施した
実績があった、という映画を観たですが、タイトル忘却。あれ、実話やったんかなぁ…。
作中では楽しくなった瞬間が、反省に導き易い瞬間やった気がします。

投稿: カリコ | 2012年11月20日 (火) 23時06分

カリコさん
わー、なんだろうその映画。
ちょっと調べてみたけどわかんないですねぇ。
「中国、わがいたみ」じゃないですよねぇ。

楽しさや喜びを知って、人からそれを奪った重大さを認識する、ということでしょうか。

劇中には
「税金ばっかかかってしょーがねーだろ」
というセリフもありました…
(泥酔した法務大臣が言う→失言で失脚)

…攻めてる演劇でした。

投稿: Leek | 2012年11月21日 (水) 06時38分

すみません、映画館で観たものならパンフとかの資料が残ってるですが、「中国、わがいたみ」ではないです。
10代の頃に深夜枠の「中国特集」的なTV放送で拾った単館系の作品なんです。
判明してもDVD化とか、されてなさそうな感じ。

>楽しさや喜びを知って、人からそれを奪った重大さを認識する、ということでしょうか。

そう、その楽しさや喜びの大きさを知らないと、奪われる痛みも恐怖も知りようがない、かと。

確かテロリストの更生施設で、指導官がその被害者遺族でした!
「指導官は復讐殺人の機会を狙ってるんではないか?」って疑惑まみれのサスペンスな滑り出し。
なんですが、狂気なまでの慈悲心で厳しく人道的に改心へと導き、更生が認められた時共に喜び合う。
社会復帰を果たし、善良な市民として平和な家庭を築いた所に、文化大革命が起こる。
人道的な旧思想を盲目的に粛清する新政権は、「洗脳を行った悪しき集団(!)」として更生施設を潰し、職員は公開処刑されるです。
その吊し上げの現場に遭遇した元テロリストは、家族に類が及ぶのを恐れて見過ごしにしようとするんですが、
指導官から「構わず立ち去れ」というアイコンタクトを送られ、たまらず「その人は素晴らしい人だ!私の先生だ!」と割って入ります。
ボコボコにされ、覚醒した時は騒ぎも静まり、誰も居なくなっていた…とゆう理不尽なエンディングでした。crying
それでも、元テロリストの行為は改心の証しという印象が残っています。

ええなあ、攻めの作品、観たいな~。

投稿: カリコ | 2012年11月21日 (水) 20時17分

うわー、ありがとうございます。
しかし、ものすごい。
ストーリー聞いただけでしんどい。

うーむ、中国映画ではないかもしれませんねぇ。
監督は中国人でも制作は海外かもしれませんね。
多感なときにハードな作品をご覧になったカリコさんなんですね。

投稿: Leek | 2012年11月22日 (木) 21時58分

すごい!!
10代で、しかもたまたま見た映画の内容をこんなに克明に語れてしまうカリコさんが(・・;)

そしてすぐに検索するLeekさんの探究心がm(__)m

めちゃめちゃ見たい!!

あ~、こういうのってどうやって調べれば良いのでしょう?

探偵ナイトスクープかっっ!?

投稿: みぃ☆ | 2012年11月22日 (木) 22時41分

言われてみれば、画の作りは海外っぽかったです。
中国で文革は「なかったこと」扱いで製作出来んやろ?です。

多感な時の方が実は打たれ強いというか、
知らずに観てしまえたなーと今は思います。
あの頃の深夜放送はマイノリティな映画を沢山流してて、乙女には存在を知る機会のない、
レンタルビデオ屋にもない作品が観られてありがたかったです。
「アステア特集」とか「ディートリッヒ特集」とかで、
古い映画のファンになりましたもん♪

投稿: カリコ | 2012年11月23日 (金) 00時42分

>みぃ☆さん

そんだけ10代には衝撃の内容やったんですよ(笑)
探偵ナイトスクープ!エエかもしれませんね~

投稿: カリコ | 2012年11月24日 (土) 21時41分

10代の頃に触れたものは何かと鮮明だったりしますよね。
感覚が鋭敏だったのでしょうなぁ。
わたしゃ年々鈍くなってる気がしてしょーがありません。

わー、わたし古い映画ぜんぜん未知の世界なんです。
80年代~90年代のやつを一番観ていました。
古いものもいいのでしょうね。

投稿: Leek | 2012年11月24日 (土) 22時06分

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